お疲れ様です。
今日は最近、私の大叔母と三井住友信託銀行との取引を通して得られた気づきがありましたので共有します。
先に要点を申し上げると、最近大叔母と三井住友信託銀行が過去に行っていた取引詳細を家族(私含む)に共有され、精査したところ高齢の大叔母が取引するには如何なものか…と思ってしまうリスク性商品の取引がありました。
家族で銀行等と交渉をしましたが、結論としては過去の取引について不適切だったことを認めさせるのにはそれなりの障壁があり、取引前に家族で気づくことができれば…と後悔しています。
少し長文になりますがご一読いただき、金融機関等とのお付き合いのしかたについて今後の参考に頂ければと思います。
では、本題に入ります。
まず、昨年2019年に大叔母が三井住友信託銀行で投資信託を取引していたことが分かり、そこから大叔母に尋ね、過去の取引を調べるところから始まりました。
きっかけは、近所に住んでいる大叔母が現在90歳と高齢であり、今後相続が発生した場合に備えて、予め大叔母とお金の相談や遺言に関することの確認をしておこうと、お金の話になり、それから三井住友信託銀行で投資信託の取引をしていたことが分かった次第です。
ここまでは別に大きな問題はありません。リスク性商品(投資信託)で運用するにしては高齢ではあるものの、年齢の割に判断力や理解力があり、そして本人が投資信託で運用をしたいという希望があれば…。
ところが、私や家族が確認した限りではそのような状況ではありませんでした。
最初に大叔母になぜ投資信託を取引をしたのか、損益はどうなっているのか、過去どのような取引をしたのか、いくつか質問しました。
返ってきた答えは、
私は分からない。(商品性、損益、現在のポジション等)
過去の取引は覚えてない。
言われた通りやった。
とのこと。
この大叔母の反応は私としては、予想通りというか、やはり…という印象。
なぜなら過去数十年間、家族ぐるみの付き合いを通して私が知っている大叔母の人物像はのんびりとした人で金融に関するリテラシーがある人ではないと感じていた。
よって、大叔母が投資信託をやっていると親から聞いた時はそのギャップに驚いてしまった。
また、当時の年齢が90歳であり、耳が遠く、目も悪い。身体能力も理解度も80歳後半から90歳相応の水準であり、個人的には投資信託でお金の運用できるような人ではないと考えていた。
ちなみに、投資信託で運用できる人ではないと考える根拠については、私が銀行で高齢顧客対応をした際の経験や、投資信託のようなリスク性商品を販売するにあたり適合性を確認する規則があり、それに照らして考えると運用は難しいだろうと考えた次第である。
ここで少し適合性の原則について記載する。
適合性の原則とは、金融商品取引業者が金融商品を勧誘・販売する際に、顧客の知識・経験・財産の状況や契約締結の目的と照らして不適当な勧誘を行なってはならないというルールです。
また、狭義の適合性の原則として、ある特定の顧客に対しては、いかに説明を尽くしても一定の商品の勧誘・販売を行ってはならないという原則をいいます。
その後、大叔母に過去の取引を聞いても分からず、過去の書類も処分していたようで見当たらない。大叔母の家からは最近届いた未開封の書類がいくつか見つかった程度である。
銀行から届いていた未開封の書類。
見ても分からないから…と放置されていた。
よって、三井住友信託銀行に問い合わせを行い、過去の詳細を知ることとなる。
以下は銀行から聞いた取引詳細を私が大まかにまとめた表である。
※PIMCO米国ハイイールド債券通貨選択型Fは4月22日確認時点の含み損
上記の表より、期間が短い乗り換えが多く、短いものでは3ヶ月程度で解約していた。定期も途中解約しているものがあり、本来なら受け取れた利息が受け取れず、投資信託購入の原資になっていた。投資信託の平均保有期間は約1.6年。これは金融庁が出している今年の投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果のデータと比較すると短いと思われる。
80代と高齢にもかかわらず、短期のトレーダーみたいな運用は正しいのだろうか。乗り換えの都度発生した手数料もバカにならない(合計400万越え。逆算した販売手数料率だけでも2%を超えており、その他に信託報酬が毎年1%近くかかっているものと思われる)
尚、適合性に関する記事に記載した通り、金融機関はリスク性商品を販売するにあたり、購入者が高齢である時は高齢ではない家族が同席して取引することが多い。だが、これらの取引で家族同席はなく、大叔母と銀行員のみで行われたとのこと。
これについて銀行に確認したところ、銀行側は、家族同席を提案したが、大叔母が断ったからとのこと。
大叔母に聞いたところ、家族同席は迷惑だと思い、断ったとのことだった。
過去の取引明細の把握が終わったので、改めて大叔母に詳細なヒアリングを行った。
もしかしたら大叔母は身内には知らない顔があり、何か考えがあって取引していた可能性もあると思ったからだ。
私は銀行と取引することや投資信託が悪いとは考えておらず、大叔母の意向があり、理解して取引していたのならそれでよいのである。あくまでも大叔母のお金なのだから何に使おうと本人の自由である。
これについては、リンク先の適合性の原則で記載したように金融機関が使っている顧客カード(プロファイル)と理解力の確認のためのシートを独自に作り、大叔母にヒアリングした。最後に銀行と投資信託を取引したのは今回の質問した日から半年程度。大きく考えは変わらないだろう。
以下はその一部を抜粋したものである。
その他に、大叔母の健康状態に関する確認も行った。
耳が遠いこともあり、説明して大叔母に記入してもらうのに一苦労であったが、これで大叔母の意向や記憶の状況、体調などが確認できた。
結果としては、銀行側に見せていただいた大叔母の顧客カードの内容とは異なっており、疑問が残った。また、今回のヒアリング含め、普段の大叔母の様子を見ていると家族としては、理解力や身体的な能力など総合して考えると、投資信託を理解して運用するのは難しいだろうという結論に至り、適合性の原則に基づき適切な販売がなされたのか疑問が残った。
その後、これらの情報収集後に家族で話し合い、問題点を挙げ、銀行側にお話ししました。
家族と共有した問題点は大まかに以下の通りです。
- 高齢の大叔母が勧誘を受け、大叔母の意向に沿い、理解をして取引していたようには思えないこと。また、高齢な大叔母の身体的な衰えに加え、記憶力や理解力が低下を鑑みるに狭義の適合性に基づき適切な販売がなされたのか疑問である。
- 保有期間が短期間で乗り換えによる取引が多い。
- 分散投資ができていない。 昨年(2019年)3種類の投信を解約して、乗り換え資金を作り、大叔母(当時89歳)の全財産の50%近くに相当する額で勧誘留意商品である投信(ドル建てハイイールド)に一点張りしていた。(期間分散もなし)
- 信託銀行を通して5年前(2015年)に遺言書を作成しているが、遺言の内容に沿った取引とは思えないこと。(運用の状況によっては遺言の達成が厳しくなる可能性がある。)
以上が家族がおかしいと感じた問題点である。
家族としては、取引で発生した損失も課題の一つではあるが、仮に利益が出ていれば問題なかったとは思わない。なぜなら損益は相場による結果論。銀行側は相場によることなく大叔母から手数料を得ているわけである。つまり、家族としては大叔母との取引で発生した損益よりも販売姿勢に不満を感じていた。
ちなみに最初に担当者に会った時に、なぜ昨年3種類のファンドを解約し、乗り換えしたのかを聞いた。大叔母が書類が来るのが煩わしいとのことから、3種類のファンドを解約し、新しい投信一本にまとめたと言っていた。
私は、それなら別に解約してから現金か定期でもいいし、2種類解約して既存のものを一種類残すこともできたはずだと伝えたら無言になっていた。
担当の上席は、過去に(2007年)に大きな損(約-365万円)が出てしまって、それを取り戻したいとのことで運用してきたとコメント。
当時の大叔母の意向は10年前なので確認しようがないが、そこまで金に興味がない高齢の大叔母がそんなこと言うだろうか…。また日経もダウも当時から倍以上になっているのに、乗り換えにより手数料が膨らんだこともあり、結局損失が大して変化していない。そもそも手数料で400万円以上銀行に払っており、取り戻したいと思っていた最初の損失以上に手数料を払っているのが理解できない。
よって先ほど記載した問題点を銀行側に伝えたところ、基本的には販売方法については問題ないとの認識であり、もし解決を望むのであればADR制度(裁判外紛争解決制度)などを活用いただき、第三者を入れる形で対応したいとのこと。
そこで様々な第三者機関を検討し、最終的には全銀協ADRを利用して相談することになった。
全銀協ADRの仕組みについてご存じない方はこのパンフレットがとても分かりやすいです。
だが、結局あっせん申し立ての直前まで話は進んだが、以下のことが我々にとって問題になった。
- あっせん申し立てを行うと、この件に関しては非公開にしなければならないこと。
- 本人主義に基づくため、あっせん申し立て後は大叔母が中心となり、応対しなければならないこと。
まず、あっせん申し立てを行うと、本件については非公開というのが納得できなかった。非公開とする範囲があっせん申し立て後の手続きの中身や、和解案に関することなら理解できるが本件に関すること全てとなると同意できなかった。仮にADRを利用して和解が成立しても、過去の傾向によると発生した損失と比較して和解によるお詫び金は相当少ないと感じた。よってあっせん申し立てを行った結果、仮に和解が成立してもわずかなお詫び金で口封じの様なことをされてしまう懸念があった。
また、大叔母があっせん委員からの問い合わせに応じたり、都心まで行き、あっせん委員と応対しなければならないというのは正直酷な話である。そして仮に大叔母が本件のことを自身で伝えることができず、行為能力に懸念があると判断された場合には成年後見人を付けるようあっせん委員から言われる可能性があるとのこと。もし拒否した場合は申し立てを前に進めることはできず、その時点で打ち切りとなり、我々からすると非公開というデメリットのみが残ることになる。ちなみに成年後見人制度は事務負担などのデメリットが存在し、簡単にできる手続きではない。
そもそも高齢で身体的な衰えに加え、記憶力や理解力が低下している人がトラブルになり、家族が詳細を把握して全銀協に相談をしているのである。トラブルを起こした本人が過去の取引を調べ、問題だと思う取引を認識してあっせん委員の人に的確に伝えることができる人ばかりではないと思う。これらの課題について家族内で議論したところ、今年91歳になる大叔母にあっせん申し立てをやらせるのは気の毒に感じ、ADRでのあっせん申し立ては見送ることになった。
私からすると泣き寝入りのような感覚だったし、大叔母や家族にも力になれず少し申し訳ない気持ちになったが、一方でこのような結果になる家族は他にもいるのではないか…と思い、今回筆を執ったわけである。(あまり思い出したくないので書くのにとても時間がかかった)
これらの経緯より、私の個人的な考えを記載して締めくくりたいと思う。
過去の大叔母の取引をみると乗り換えが多いなと思うが、昨年大叔母が89歳の時に3つの投資信託を売却し(トータルで損切かつ、一部は半年程度で解約)、その売却資金で勧誘留意商品である米国ハイイールド債券通貨選択型ファンド(米ドル)を全財産の半分近い金額で分散もせず乗り換えをしていたのが特に理解できない。また、5年前に大叔母が三井住友信託銀行で遺言作成をして、亡くなった時に資産をどのようにするか…ということを把握しているにも関わらずこのような取引をしていたのも理解できない。これらの状況からとにかく売って手数料が稼げればいいや…という銀行の担当者の販売姿勢みたいなものを感じる取引だと思った。
金融のプロとして顧客のことを考え資産運用をしているとは思えず、ただの売り子である。
こんなことを未だにやってるから銀行は顧客から煙たがられ、銀行内でもリテール担当は金融専門性の不足から法営やIBD、市場部門の人達から下に見られる傾向にあると思う。
商品を売って手数料を稼ぐことは悪ではないが、適合性の原則に基づき商品の勧誘・販売は適切に行って欲しい。行内のマニュアル上、販売ができる先であっても、適合性の原則が何のためにあるのかを考えて判断すれば耳が遠く、片目が見えていない89歳の高齢者を勧誘し、上述の取引はしないと思う。今後これらのことが改善されて、信頼できる金融機関になって欲しい。
最後に今回の件で私たち家族に非が無いとは思わない。普段からもう少し大叔母とお金に関することを含め、コミュニケーションをとっていれば、今回の件も取引前に相談したうえで判断できたかもしれない。もしかしたら大叔母に家族同席をしてもらうのは申し訳ないと思わせていたのかもしれない。よってその点は大いに反省したいと思う。もし、読者の方で高齢の家族がいる場合は参考にしていただき、未然に防いでいただくのが一番だと思います。私たちの家族のように取引した後にひっくり返すことは基本的に難しく、やはり予防をするというのが最善の策だと思います。
以上。
コメント
初めまして
義母(75才)も、三井住友信託銀行に5~6千万円程預金しています。
(定期預金・外貨預金・一時払い生命保険)
最近、投資信託を勧められている様です。
記事の三井住友信託銀行の支店名お教え頂ければ、ありがたいです。
木村さん
ご連絡ありがとうございます。
義母さんの件、心配になりますよね。
よくコミュニケーションをとっていただき、ご本人、ご家族が納得のいく取引をされることを願ってます。
支店名ですが家族の意向もあり、伏せさせていただきました。何卒ご理解ください。
神奈川県の21支店のいずれかとだけ申し上げておきます。
ご意向に沿えず申し訳ありません。
ニ~ノ様
早々のコメントありがとうございました。
義母も神奈川県内の支店で心配です。
義母には、個人向け国債を薦めます。
(三井住友信託銀行は外貨預金も熱心で、頻繁にキャンペーンを行っており結構な金額の外貨預金を保有しています)